後藤見聞録

2019/01/12

「勝手にめんぴり考」本編~九州男児とか男尊女卑とか~

いよいよ今日から福岡で「めんたいぴりり」が先行上映となりました。
まずは公開、誠におめでとうございます!

先日プロローグだけ書いてそのままだったのはサボっていたわけではなく、今日の先行上映に際しての舞台挨拶のお仕事を頂いていたので、そちらをこしらえてから、と思い今に至ります。
よしもとニュースセンターのオフィシャルライターをさせて頂いているので、まもなく記事が公開されると思います。
読んでね(*’▽’)

さて。昨年11月末に一足早く業務試写にて観てきた「めんぴり」。

①平成最後の「昭和の映画」
②芸人が役者をやることのメリット/デメリット
③経営者視点で観るめんたいぴりり其の壱:ふくや創業者に学ぶ経営者の心得
④経営者視点で観るめんたいぴりり其の弐:戦後世代とミレニアル世代、経営の観点はどう変わったか
⑤風味堂のエンディングの秀逸性
⑥のぼせもんを亭主に持つ九州女の我慢強さの功罪
⑦ローカルムービーの未来
⑧「福岡」は全国区になれるのか~「福岡の正解」を引っ提げての、「博多の正解」これいかに~
⑨●●さん役を受け入れた大吉さんの、華丸さんへの愛
⑩試写室で左右からドルビーばりの音響効果。偉いおじさん達の嗚咽
⑪とにかく強い!華丸さんの目力を●●(筆圧とか)に例えよう企画

と11個の「書きたいエッセンス」だけぶちまけてそのままでしたが、全部書くのも無粋なので、一番書きたいネタだけ書きます。

それは、⑤と⑥の合成、⑩風味。
⑤風味堂のエンディングの秀逸性
⑥のぼせもんを亭主に持つ九州女の我慢強さの功罪
⑩試写室で左右からドルビーばりの音響効果。偉いおじさん達の嗚咽

まずは⑩。業務試写はよしもと関係者とふくやさんの関係者が多かったため、私が見た回は偉いおじさまばかりでした。
話の内容はネタバレになるので書きませんが、途中、男性ならぐっとくるだろうな、というシーンがあります。

そこで出現したドルビー効果ばりの偉いおじさんたちの嗚咽。
「うっ」と泣きそうになった瞬間、右後ろ、左後ろから嗚咽が相次ぎ、泣くタイミングを逃しました。
これはですね、もちろん男性だからっていうのもあると思うのですが、九州男児だから、という要因もあるのではないかと。

はい、ここで⑥です。
主人公・博多華丸先生演じる海野俊之の妻・千代子(富田靖子さん)は、とにかく美味しい明太子を作って博多の人を笑顔にしたいということしか考えていない俊之相手に金銭的にも精神的にもかなり振り回されています。
(大前提のめんぴりのストーリーですが、すっごく簡単に説明すると、今では博多のお土産の代名詞ともなっている「明太子」を博多で最初に作った川原俊夫さんが、特許もとらずに「博多の名物になればいい」と技術も周囲に提供し、やり散らかして成功した実話がもとになっています)
起業家の奥さんってきっと大なり小なりそうなんだろうな、と思うのですが、成功したからいいものの、山のぼせ(山笠に命をかける博多の男衆のことをこう呼びます)なもんで売れた明太子の売り上げは山笠に寄付するわ、自分のところにもたいしてお金がないのに人に貸すわ、もう、相当なやり散らかしなんです。

ここで、この千代子さんの言葉です。
これ、めんぴりカレンダー(江口カン監督から年末の飲み会で頂きました。カンさんありがとうございます!)の今週の言葉なんですが、もう、しみじみ心が痛むんです。
「千代子しゃん…あんたほんとにこらえ性のある人やね…」

最近Twitter界隈で「#九州の男尊女卑」というタグがまわっておりまして、多分に漏れず九州女な私も、九州男児の男尊女卑的な面が正直好かんです。
でもそれは、たぶん九州男児そのものが悪いのではなく、本質が抜け落ちて形骸化した態度・発言だけが「九州男児」「男らしい」という価値観として残っているからなのではないか、と千代子さんを見ていて強く感じました。まぁ、刺される覚悟で言えば、本当の「九州男児」が減った、っちゅうことですかね。
少なくとも今の「九州男児」は「男尊女卑」の香りをまとった迷惑なベクトルが強めですが、本来はそうではなかったと思います。
つまり、「九州男児」のイメージと「男尊女卑」の文化はイコールではなくちょっと違う軸だったのではないかと思うのです。

事実、俊之はなんだかんだあったけど今では博多に最大の貢献を果たした「ふくや(映画の中ではふくのや)」の初代。
個人的にも「家でご飯を食べるなら、明太子と白いご飯さえあればおかずはなくても構わない」と思うほどに明太子をこよなく溺愛しております。
そんな文化を一生懸命作ったのが、千代子の旦那・俊之なんです。
そらぁ頭にくることや腹かくことばかりだったでしょう。
でも、時には「あんた、いいかげんにしい!」と叫びながらも、日常的にはそれをぐっとこらえながら、いえ劇中の千代子はニコニコしながら見守って「しょうがなかねー」で済ませるんです。

ここで言いたい。

これ、九州の女が忍耐強い、って読み解かれると困るんです
つまらん男に虐げられても文句を言わないのが九州の女なのではなく、支えるに値する、というと未来予測的なので、「信じてついていきたい」と思わせる力量の男だからこそ、千代子はニコニコできたんです。
このあたりは男性陣は観ていてもあまりピンとこないだろうなぁと思います。
そして九州の女性は、そんな千代子に自分を重ね、嫌悪感や貫き通す憧れで揺れ動くと思います。

九州の男尊女卑の話は本題ではなくエッセンスなのでこれくらいにしますが、このエッセンスを最後にぐわっと盛り上げてくれるのが、⑤。
映画を観られる際は、本編が終わったところで帰ることなく、風味堂さんのエンディングをぜひ、じっくり歌詞まで聞いてください。
千代子の想いが小気味よいメロディで五月雨式に詰め込まれていて、なんかもう、泣き笑いです。
この映画を観たあとだからこそ、泣き笑い。
そして日本映画史上稀に見る(当社比)エンドロールの長さは、エキストラを全員クレジットしているカンさんの想いです。ぜひここも敬意を表して見てもらえたらな、と思います。

【おまけ(どうしても書きたい⑨)】
本日の会見でも何度も話題になったのが、博多大吉先生による「スケトウダラさん」。
明太子のために卵巣を提供してくれるスケトウダラの妖精なんですが、このスケトウダラさんと俊之(つまり華丸さん)との掛け合いがですね、ファンならずとも必見です。
あの大吉先生が、あの飛ぶ鳥を落とす勢いで「イケメン枠」に軒並みノミネートされるようになってきた(メンズ誌でえっらいかっこいい写真とか載ってると誰!?ってびっくりしますが)大吉先生が、あんな恰好であんなことしてるなんて!
↓気になる方は予告Vでどうぞ↓

これは華丸さんへの大吉先生の愛情以外のなにものでもない、と勝手にオススメさせて頂きます。

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